私が一番好きな4コマ漫画・「棺担ぎのクロ。」2巻が発売されました。
時間がなくてレビューできなかったので、今回レビューしたいと思います。
今回の2巻は主にクロの過去や伏線にまつわる話。
その中で印象的なエピソードをちょっとだけ。
★「黒い旅人」との出会いとクロの帽子旅先でクロは、不思議な出で立ちをした旅人と出会います。
彼はクロに旅のことを教えるとともに、自分の帽子をプレゼントしました。
視界が半分程度に下がり、困惑するクロに彼はこう言います。
『半分くらいがいいのですよ
世界を見渡せばそれほど綺麗ごとばかりじゃないからね
旅人にとっては見えるモノ全てが所持物であり道具なのさ
使えるものは使うし、役に立たないものは袋にしまっておくべきだ
そうしていつか帽子に隠れた「もう半分」が見たくなった時は鍔をつまんで見上げればいい
「旅」はね そのくらいの方が具合がいいのさ』世界の全てを受容出来るほど人は強くは無い。
雨風や日光だけでなく特異な目を向ける人々の視線。
それらからクロの体や心を守ってくれる帽子。
それを与えてくれた旅人との思い出とともに、クロに帽子は欠かせないものになっているようです。
余談ですが黒い旅人とクロは殺人容疑で捕まったりしてしまうのですが、実は犯人はヤス。
ポートピア噴きました。
★クロと旅立ち魔女の手がかりを探すため、蝙蝠のセンと共に旅に出た少女クロ。
センは体を1000の蝙蝠にされ、クロもまた違う姿に魔女に変えられました。
ちなみにクロの今の眼鏡はセンが人間時代に使っていたもの。
砂糖をちょっとずつ食べて元気出したり、物取りに襲われてお金を奪われたりしながら、旅を続けるクロたち。
その旅先で泊まった宿で女の子らしい服を着たときのクロの台詞が印象的です。
……今の わたしには似合わないよ今の体に対する感情を垣間見せるクロ。
自分の好きな服とそれが似合わない今の体へのジレンマ故か嬉しさとどこか寂しげな表情を浮かべます。
そして旅先でクロたちは「死の町」の噂を耳にする・・・。
★魔女の呪い 一人の少女と出会いと別れある街に一人の少女が住んでいた。彼女の名はモー。
ある日、彼女は気まぐれに外に出て、『魔女』と出会います。
魔女になることを望んだモーに『魔女』が与えたものは……体の黒い染みだけだった。
黒い染みは時を追うごとに増えていき、街にも異変が起きはじめる。
次々と倒れていく人々…。そして街でモーは独りになっていた…。
そんな「死の町」を訪れたクロたちは、独り残ったモーと出会います。
同じ魔女の呪いを受けたと知り、心を通わせるクロとモー。
しかし、モーの体は黒い染みに侵食されていき、ついに歩く自由すら失ってしまう。
モーを背負い外で亡くなった人たちの棺を見つめてモーとクロは語り合います。
モー『でもなんで棺の中に入ってお墓の中で眠るのかしら
あたしはあんな窮屈なところごめんだわ』
クロ『うん でも センセイは死んだ人と言うよりも残された人のためのものだっていってたよ
体はなくなってもその人がこの世界にいた「しるし」になるんだって』クロが『棺』を担ぐ理由が、この台詞にも隠されてる気がします。
もし途中で果てたとき、生きていた証をクロは残したいのかもしれません。
そして数日後、黒い染みに侵されきったモーはクロにある頼みごとをします。
『足までだったら平気だったけど、自慢にしてた髪だけは黒くしたくない
村に積んである棺桶はどれも要らないから だから あんたが私の棺になって
あんたの中にあたしをいれて 死ぬまであたしのこと忘れないで』これを最期にモーは姿を消しました。
モーの最期を看取ったクロは、空っぽの棺を持ち出し、こう語ります。
『だからこれは私の棺 わたしとモーが入る棺
モーの最期は いつか来るわたしの最後だから その時は私も私のまま終わりたい』棺=クロの心の中に入ってモーは消えてしまったのか、そのまま消えてしまいクロの心に残るのみなのか、あるいはクロが介錯してあげたのか、文字通りクロの中にモーが入る(融合?)のか、モーの最期は明確に描写されてないので、この台詞がどう解釈すべきかは分かりません。
ただ、棺=残された者の為のしるしという話が前出されてるので、棺=クロの記憶なのかなと個人的には解釈してます。
哀しい記憶を残して、クロの旅は続きます。
※モーの最期の刹那、黒い染みに関しても語られています。
黒い染みは気持ちが真っ黒になった時に広がり、元に戻らないもののようです。
他にも印象的なエピソードは多いのですが、個人的に好きなのは、最初の空を飛ぶエピソード。
一人では飛べないニジュク・サンジュが力を合わせて空を飛び、新しい世界を見つけて羽ばたくのが詩的で好きです。
4コマという枠ながら圧倒的な構成力、雰囲気を壊さぬよう適度にちりばめられたコメディ。
また、単行本にそのまま収録されているきゆづき先生のカラーページは超美麗なので、一見の価値ありです。
時に涙、時に感動。新しい4コマを見たい人にお勧めしたい作品です。